今回のMadeWithUnity探検隊は"Neon White"(ネオン・ホワイト)のレビューとなります!Unity製のFPSゲームとしては、やっと出てきたように思えるスピーディーでレスポンスの良い面白いFPSアクションゲームです。こういうゲームを待っていた!
達成率99%までやり込み、プレイ時間は25時間ほどになりました。自分のプレイスタイルとしては、可能な限り一面ずつ最高ランクを取れるように(ある意味では非効率に)プレイしていったので、単純にクリアするだけならもっと早く、慣れている人なら16時間より短い時間でクリアできるかもしれません。
自分はSteam版でプレイしましたが、定価2,950円を考慮しても、近年のインディゲームではトップクラスの出来ですし、やり込み甲斐もあり、ストーリーもなかなか良かったので、スピーディなFPSアクションを遊びたい人に強くお勧めできるゲームです。
物語の始まり、ネオンとしての覚醒
2000年代前半の日本アニメっぽい、セルアニメ調のオープニング・ムービーが流れた後でゲームは始まります。(ペルソナなどからの影響も多分に感じます)
主人公である『ホワイト』は目を覚ますと、記憶を無くしていました。なんやかんやあった後で、どうやら自分は死んで『ネオン』と呼ばれる存在となり、神に仕える信者達から悪魔達を倒すという使命を負わせられていることを知ります。
ホワイトは戸惑いながらも、前世では仲間だったとされる相棒キャラらしき『イエロー』、恋人だったと思われる女スナイパー『レッド』、ヤンデレちっくなアブナイ美少女『バイオレット』達とやり取りしつつ、ネオンとしての頂点を目指すことに・・・。そして、信者達に使役されている謎の怪人の正体とは・・・!?
ようやくUnity製の面白そうなFPSが来たな!と思って、このゲームを手に取ったのでストーリーに期待はしてなかったのですが、結果的にかなり良かったです。
ゲームの邪魔をするようなモノでもなく、薄っぺらくもなく、本当にちょうどいい塩梅でストーリーやキャラクター同士の会話が展開されていくので、良い感じにFPSゲームに軽いノベルゲーが付いてるような作品になっていると思います。
詳しくは後述しますが、このゲームは基本的にはFPSアクションゲームであり、ステージクリア方式です。各ステージに隠された秘密のアイテムを手に入れると、それに対応するキャラの親密度が上がり、会話やサブステージが解放されていく構造になっています。
これはやり込み要素なので、淡々とメインミッションだけをクリアしていっても良かったのですが、やっぱ気になるのでやってしまうくらいには、キャラやストーリーに魅力はあったということでしょう。主人公が記憶喪失なので、生前何があったんだ、というのも気になりますからね。
ゲーム性について
と、少し前置きが長くなってしまいましたが、本ゲームにおいてもっとも語るべき内容がそのゲーム性についてです。これはかなり良くできています!
このゲームはFPSではありますが、そのゲーム性をより厳密に言うならばFPSアクションとするべきでしょう。銃火器を操りながら、ゴールを目指してステージを疾走するアクションゲームです。しかし、落下スピードなどはゆったりしており、速いゲームが苦手な人もそこまで怖がる必要は無いと思います。
FPSということで、もちろん敵やオブジェクトを狙い撃つというアクションが重要ではあるのですが、エイムに厳密さが求められることはそこまでありません。というのもゲーム中に登場する敵は攻撃こそしてくるものの動くことはなく、その場から攻撃してくるだけだからです。
つまり敵と言っても、弾を撃ってくる障害物のような存在であり、素早く動く敵に的確にエイムを合わせて撃つ、というようなタスクがこのゲームからは取り除かれているということになります。
これはオートエイムがオプションで切り替え可能であることも合わせて、Switchでのプレイなどを含めたパッド操作が考慮されたゲームということでもあるし、そもそもシューティングよりもアクションの方に重きを置いているということでもあります。
スポーツ系FPS
FPSには大別して、二種類あるとされています。リアル系とスポーツ系です。コールオブデューティーやカウンターストライクがリアル系、DOOMやQuakeなどがスポーツ系とされています。
あくまで普通の人間同士の銃撃戦、戦争をベースにしているリアル系に対して、SF要素があったり、超人同士の戦いを目指すスポーツ系はとてもスピーディでアクロバティックなゲームになることが多いです。
本作はとてもスピーディーであり、二段ジャンプや空中ダッシュ、フックショットなどの多彩なアクションがあることからもスポーツ系FPSであることは間違いないでしょう。
スポーツ系FPSはそうした過激さ故にFPSに馴染みが無い人にとっては手を出しにくい、という側面があると思います。それに対して、このゲームはエイムに対する要求を少し下げて、それよりもスピーディなアクションの方に目を向けて、障害物レースのようなゲーム性に落としこんでいます。
それだけだとパルクール要素のあるFPSと言ってしまえばそうです。しかし、このゲームにはカードというものがあります。
武器、アクションの切り替え
スポーツ系FPSでエイムのほかに難しい部分と言えるのが、武器の切り替えです。スピーディな展開の中で的確に武器を切り替えて対応する、というのはスポーツ系FPSでは当たり前のこととは言え、実際にはなかなか難しい判断と操作が求められます。
特にマウスキーボードだと、数字キーを押して武器を切り替えるのは慣れないとかなり難しいですよね。
またFPSに限らず、全てのアクションゲームにおいて、ここではどんなアクションをどう組み合わせていかなければならないのか、という判断は難しく、プレイヤーにその能力を身に着かせるためには、かなり丁寧にレベルデザインをして、プレイヤーに学習させないといけません。
Neon Whiteにおいて、この二つの問題点に対しての解決策がカードシステムということになります。
このゲームには数種類の武器があり、それらはカードとしてステージ内に設置されており、それを拾うことでその武器を使うことが出来ます。そして、武器にはそれぞれアビリティが付与されており、カードを破棄(マウスだと右クリック)することによって、その能力を発動させることが出来ます。
上画像はアサルトライフルのカードで、アビリティはボムです。これで範囲内の敵を一度に倒したり、爆風で高く飛び上がれたりできます。
また黄色のカードはハンドガンですが、そのアビリティはジャンプなので、ジャンプ中に使うと二段ジャンプが出来るようになり、高い場所にも飛び移れるようになります。下画像はまさに普通のジャンプでは届かない高い壁の前にハンドガン・カードが置かれている状況です。
このゲームでは基本的には、そのカードを使うべき場所(付近)にカードが置かれており、拾うと自動的に武器が切り替わるので、そのまま撃つなりアビリティを発動させればいい、というデザインになっています。
つまり、使うべき武器やそのタイミングを判断する労力がかなり軽減されています。プレイヤーが意識的に武器を切り替える場面は一部あるのですが、それは後半の一部分だけですので、基本的にはその場で拾ったカードをすぐ使う、というようなプレイが主になります。カードとして能力が切り離されているので、同じワンボタンで様々な能力が使えるのが簡単で良いです。
やりこみ要素として、カードをその場で使わずに、違う場所で使うことで隠しアイテムを手に入れる、というのも応用編として上手く出来ています。
また、使えるカードの種類もゲームが進行していくごとに増えていき、一つのステージで様々な武器やアビリティを組み合わせて進む、ということが増えてはくるのですが、やはり基本的にはその場にあるカードを使っていくという構造だし、そもそも武器カードを最大二種類までしか持てません。やはり、武器持ち替えの負担はデザインとして軽減されているということです。
ステージ制とレベルデザイン
こうしたFPSの面倒な部分の緩和と共にステージ制によって、ゲームを通してテンポよく快適でスタイリッシュなプレイを楽しめるようになっています。
テーマ性を持った短いステージを用意して、それをプレイさせていくことによって、とにかくプレイヤーに快適にプレイさせつつ、本作の操作やシステムについての熟練度を少しずつ上げていこうとする優しいゲームデザインです。
初期のステージは特に移動やジャンプなどの基本的な移動方法に絞ったテーマで作られており、FPSに不慣れな人でも、順にやっていけばFPSの基礎能力が身についていくでしょう。
ネオン・ランクというランク・システムがゲーム内で設定されており、出来る限りステージを早くクリアして、一定のランクを得ないとゲームを進行出来なくなっています。なので、本質的にはタイムアタック・ゲームとなっていますが、ステージ自体が長くなく、クリアするだけなら反復も苦ではないレベルになっているので、そこも上手く出来ていると思います。
難易度設定もおかしいところはほぼなくて、インディゲームとしてはかなり丁寧なレベルデザインです。ゲーム内ランクを気にせずクリアするだけなら、詰まることはほとんど無いでしょう。とにかく、やるべきアクションがあるところには対応するカードが置いてあるので、あとはそれを上手く使えるかです。
最近のゲームだと、どうしてもステージ制は時代遅れのシステムとされがちですが、やはりそれはゲームに依りけりであり、本作はステージ制がそのゲーム性としっかり噛み合っているので、むしろステージ制再評価のゲームになっていると思います。
まとめ
というわけで、Neon Whiteについては以上になりますが、すでに多くの人が高評価しているように、本作は近年出たインディ作品の中でもトップクラスの出来ではないでしょうか。
ゲーム性としては、スポーツ系FPSの難しい部分や面倒な部分を上手く取り除いたり軽減しており、FPS初心者でも楽しめるだけでなく、FPSをやってきた人間でも爽快なアクションに熱中できるゲームになっているはずです。
ステージ数もかなり多く、やり込みを含めたらボリュームも申し分なく、インディとしては3000円近い定価は安くは無いですが、内容的にはかなりコスパが良い作品だと言えます。
個人的には、このような快活でレスポンスが良い、面白いFPSがMadeWithUnityで出てきたことが何よりも嬉しく、ゲーム制作を目指すものとしては、このようなFPSを作れるようになりたいなぁと思う限りです。