Unityでインディゲームを作る!

Unityでのゲーム制作を目指し、それに関わる話題についてのブログ

MadeWithUnity探検隊! "Lost In Random" ランダム万歳!

Lost_In_Random

 ランダムが全てを支配する!?不思議な世界で大冒険!今回のMadeWithUnity探検隊は"Lost In Random"(ロスト・イン・ランダム)のレビューです。

※本記事の画像はゲームプレイのスクリーンショット、あるいは公式サイトの画像の引用となります。

 

 "クイーン"によって支配された"ランダム"という世界では、12歳になるとクイーンの黒いサイコロを振り、その目によって今後どこで生きていくかを決定づけられます。

LostInRandom_Even

 主人公のグースー(英語オリジナルでは"Even"つまり"偶数"から)とその姉、キースー(オリジナル名は"Odd"、つまり奇数から命名)は、ガラクタ集めで人々が働くワン・クラフトという町で暮らしていました。

LostInRandom_BlackDice

 姉は隠れるように12歳の誕生日を迎えますが、やはりクイーンの黒サイコロを振ることになり、結果シックストピアというクイーンの本拠地となる『夢のような』宮殿に連れ去られてしまいます。

 

 一年近く経ったある夜、不思議なゴーストに導かれ、グースーは姉を救うため世界を股に掛けた冒険に旅立つことに。そして、その道中で手足の生えた奇妙なサイコロ、"ダイシー"と出会い、二人で様々な困難に立ち向かうことになるのです。

LostInRandom_TwoTown

 ・・・というように、世界観は非常に面白いものとなっており、そのビジュアルやストーリーの一体感は、最近のUnityゲームの中でも特筆すべきものになっていると思います。15時間ほどでクリアしました。

 個人的には海外のアニメ作品である、アドベンチャータイムの作者が参加している、というのがプレイしてみようと思ったきっかけでした。同作品にも見られる、尖って奇妙なキャラクター達や、しかし丁寧なストーリーテリング、軽快なセリフ回しは本作でも健在で、その世界観は非常に楽しめました。が!しかし!

 

 残念なことにアクションゲームとしてはどうなのか、となると非常に惜しい、残念な出来と言わざるを得ません。3Dアクションゲームなのですが、まず単純に操作性があまり良くないです。

 そして肝心のランダム要素のある戦闘システムも、戦闘中にサイコロを振って、その目次第でバトル内容が変わる、というアイディア自体は面白いのですが、楽しいゲームプレイとなるまでには洗練されていません。

 

 いくつかの街やダンジョンを探索するゲームになっているのですが、その世界観や造形は良いもののアクションゲームのレベルデザインとしては、いろいろと至らない部分があります。慣れたら割と大丈夫なレベルではあるんですが。

 

 というわけで、3Dアクションゲーとしてではなく、アドベンチャーゲームとして、その世界観やキャラクターとストーリーを楽しむゲームだと思います。その点ではインディーゲームとして良くまとまっているし、素直に楽しめるゲームです。

 アクションゲームとしては期待していたモノを下回っていたので、かなり残念ではありました。しかし、それを補って上回る魅力があったのは間違いなく、合間の戦闘はもうミニゲームとして割り切ることで、最後まで楽しむことが出来ました。評価点数としては75~80点くらいでしょうか。

 

 以後、気になった点について書いてみたいと思います。

 

ゲームらしい動作とリアルな動作

 まずは操作性なのですが、あまり良くありません。世界観が重要なゲームではあるので、あまりに機敏に動きすぎてもダメだと理解はしてます。しかし、慣性が変に効くキャラクターの挙動は、どうしても操作しにくく感じてしまうのです。

 

 このゲームでプレイヤーが平常時に行う多くの動作は歩く、走る、パチンコで狙って撃つ、カメラを動かす、の4つになるかと思いますが、どれも操作に良くないクセがあります。

 リアルに寄せるのであれば、慣性が効いたり、予備動作がきちんしてることが大事ですが、世界観やストーリーを楽しませたいなら、そこはストレスの少ないゲーム的な快適な挙動で良くないか、と思ってしまいます。

 

カードを引き、サイコロを振れ!

 本来ならば目玉の一つになったであろう、カードとサイコロを絡めたランダム要素の強いバトルシステムについてです。前述していた通り、自分はこの要素についてかなり期待をしていました。

 しかし、実際にはアクションゲームとしても、カードゲームとしても微妙な出来。最低限は成り立っているけど、もうちょいなんとかならなかったのか、という感じです。

LostInRandom_CardDeck

 いろんなカードがあり、それが揃う度に戦闘での選択肢が広がっていく喜びはあるのですが・・・。

 

LostInRandom_BattleSystem

 バトルの基本的な流れとして・・・まず戦闘が開始すると手札がゼロの状態から始まります。敵にはクリスタルが付着しており、パチンコで撃つか、敵の攻撃をタイミングよく回避した時に発生する"ブリンク"で敵を通り抜けると地面に落ちます。

 そうしてクリスタルを集めるとカードが引けて、カードが手元にある状態でサイコロを振ると、出た目のコスト分だけカードからアイテムや武器を取り出せる、というものです。これを繰り返して全ての敵を撃破したら勝利となります。

 

 まずは単純に戦闘のテンポがあまり良くない、という部分。カードが揃うまではプレイヤーはチマチマと敵の体についてるクリスタルを狙い撃つか、敵の攻撃を待つか、ということになるんですが、その時間のつまらなさと言ったら!

 またサイコロを振った後のカードを選択する時間は自分以外の時間は全て止まってプレイヤーだけ自由に動けるのですが、しょうがないとは言え、アクションゲームとしてはテンポを悪くしてしまっています。そこはカードゲームでもあるので、避けられない仕様ではありますが。

 

 前述の通り、パチンコの操作性も良くはないし狙い撃つ気持ちよさも無く、場合によっては戦場が広くない場合も多いです。なので、自分に迫ってくる敵の小さな一部分をせかされるようにエイムして撃つ、というゲームプレイに面白味を見出すのは少し難しい。敵の攻撃を待つ、というのも受動的な行動であり、自発的な行動とは言えません。

 

 戦闘が始まった時点で数枚カードが手元にあり、サイコロを振るところからスタートすれば、もうちょっとテンポ感は良かったのかな、とは思いました。

 ただ、ダイシーが最初は1か2の目しか出せない、というゲーム展開上の都合などもあるので、そこらへんは難しい所です。

 

3Dゲームにおけるゲームプレイとカメラの挙動について

 もうこれは3Dゲーム、特に3Dアクションゲームの宿命ですが、カメラの挙動についてです。このゲームはプレイヤーに求められるカメラ操作が、そのゲーム性に対してちょっと多すぎます。

 自分はキーボードマウスでこのゲームをプレイしたのですが、基本マウスはカメラ操作に有利なはずが、それでも道中、カメラ操作がかなり億劫になりました。(※環境によるとは思いますが、場合によってはカメラの感度は下げた方が良いです)

 前半にステルス・プレイをする部分があるのですが、カメラをかなり動かさないとダメ部分が多く、そこで少し酔いました。(慣れと感度調整でなんとか対応)

 

 このゲームのカメラ・システムはいわゆるTPS方式なのですが、プレイヤーに対してカメラがやや近いというのもあり、街中を見渡したり、歩き回る際にかなりカメラを動かさないといけません。カメラのある方向に走ると自動で動いてくれるわけでもなく、各街もけっこう入り組んでいるので、カメラ操作が意外と忙しいのです。

 

 このゲームの魅力の一つとして、各ロケーションは作り込まれてはいるので、その景色を見渡すという意味で視点を動かせるのは良いのですが、ゲームプレイと一致したカメラ・システムかというと微妙で、せめて街中などは見下ろし型の固定式カメラでも良かったのではないかと思ってしまいます。

 

LostInRandom_MannieDex

カードが好きすぎてカード屋そのものになった男

 また今作でのカードは、サブクエストをクリアしたり、マニー・デックスというカード屋から買うことで入手できます。買うためのお金は、敵を倒す、各地に置いてある陶器をパチンコで壊す、ダイシーが入り込むと金銭が得られるダストシュート?を見つける、サブクエストをクリア、で得ることが可能です。

 この中で陶器を探す、ということになるとカメラをグリグリ動かすことになるのですが、陶器自体が微妙に見にくいというのもあり、結構苦痛ではあります。上画像の左上にぼんやりと見えるのが、その陶器です。これが様々な場所に置かれているわけです。

 

 強いカードをなるべく早く手に入れたい!となると、この陶器探しをすることになるんですが、カメラ・システムと狭く入り組んだ環境デザインも相まって苦行になってしまっているんですよね。そこまで必死に探さなくても、最終的には全部のカードを最低必要数揃えるのには、余るくらいのお金があるので大丈夫なんですが。

 カメラを必死に動かして、背景に溶け込む壺を探すプレイってこのゲームに本当に必要かな、とは思ってしまいます。パチンコで狙って撃つ、が基本ゲームプレイとして組み込まれているので、それを活かそうとしたミニゲームではあると思うのですが。

 この陶器探しは特に今作の荒いカメラ・システムと噛み合わせが悪い部分になってしまっています。

 

 狭くてゴチャゴチャしたロケーションというのは、間違いなく雰囲気が出ます。しかし、ゲームプレイをする場として考慮、設計がされていないと、ただただ動きにくい"レベル"ですし、さらにカメラ・システムが適切でないと苦痛になる危険もあるということをつくづく考えさせられます。

 

 またカメラがオブジェクトと衝突して、その位置を自動で変えるシステムもかなり荒くて、衝突判定になるオブジェクトの選別も適当なため、無駄にカメラが動いてしまうという挙動もあり、インディゲームとは言え、昨今の3Dゲームのカメラとしては看過できない問題点もあります。

 とにかく3Dゲーム、3Dアクションゲームを作る以上はカメラ・システムというものにきちんと向き合うことが重要で、ゲーム性、ゲームプレイ、レベルデザインなど全てを考慮した適切なカメラの挙動を考えなければならないと改めて考えさせられました。

 

まとめ

LostInRandom_Singer

 というわけで、アクションゲームとしては文句がかなり出てきてしまう作品ではあるのですが、ストーリーに関してはもう一回プレイしてまた見たいと思える出来ですし、物語構造も王道で良くできた作品だと思います。

 単純なアニメ作品として出たら、そのアニメ見るで良くね?と言われてしまいそうですが、それだけにゲームプレイがより洗練されていたら・・・な惜しい作品です。

 

 ただし、そこら辺を我慢できる方でしたら、おススメは出来るゲームです。奇妙な世界観や魅力あるキャラクター達の掛け合いを楽しみたい方は、Steamセール時などに買ってみると良いかもしれません。(正規価格はちょい高め)

 ただ!最後の問題点ですが、EAのOriginをインストールする必要があるのです!これもめんどくさかった!

 

 という風にいくつか障壁ありますが、それを超えてプレイするだけの価値はあるとは思いますので、ぜひ!!