Unityでインディゲームを作る!

Unityでのゲーム制作を目指し、それに関わる話題についてのブログ

MadeWithUnity探検隊! "Death's Door" 小さなカラスの大冒険 [ゲーム感想 レビュー]

 今回のMadeWithUnity探検隊はDeath's Doorです。いわゆるソウルライク、あるいはゼルダライクを融合させたような3Dアクションゲーム。最近出たMadeWithUnityの3Dアクションとしては良くできた作品となっています。(2021年7月20日発売)

Death's Door TITLE

 本記事は主にゲームデザイン、システムなどへの言及が中心で、ストーリー方面へのネタバレは極力しないようにしてますが、ある程度はご了承ください。最序盤のボスまではバラしています。(約4700字)

 そして、ゲーム制作系ブログなので、感想だけでなく分析的な側面も含むので、そこもご理解ください。

 

 およそ15時間ほどで、クリア率90%越えでラスボスを倒しました。クリア後のコンテンツもありますが、それはまだプレイ途中です。日本語対応しており、ローカライズはかなり良い出来だと思います。キーボードでもプレイできますが、このゲームに関してはパッドでやる方が良いです、斜め見下ろし視点(クォーター・ビュー)なので。

Death's Door Bus

バスに乗って出勤するカラス

 後述の通り、いくつかの問題点や不満点はあるのですが、基本的に最初から終わりまで、集中して遊べたので良いゲームだったのだと思います。75~80点くらいの評価でしょうか。佳作、という感じです。Unity製のアクションゲームとして恥ずかしくはない出来になっております。

 

 ボリュームに関しては、決して多い方ではないです。Steamにて2000円で購入したんですが、同じくUnity製であるHollow Knightは1480円だったりするんですよね。これに関してはHollow Knightのボリュームがそもそも異常ではあるのですが、2Dゲームと3Dゲームという違いがあるにせよ、同じインディゲームとして比較してしまうと、値段の割にDeath's Doorは少し短く感じてしまうのは事実です。

 とは言え、コンパクトに楽しむ、ということを考えると20時間以内に終わるというのはちょうどいいのかもしれません。

 

どんなゲーム?

Big Raven

犯行現場

 主人公はソウルを狩るリーパーという職業に就く、小さなカラス。ある日、任務で巨大モンスターのソウルを回収に向かいますが、謎の大きなカラスに奪われてしまいます。いろいろあって、各地に君臨する巨大なソウルを持つ三人と戦うことになったカラスくん。

 この世界の秘密とは。生と死とは。限りある命と永遠の命とは。Death's Doorは運命に抗う人々を描くストーリーとなっています。とは言え、そんなに重苦しいゲームではなく、素直に冒険と戦闘を楽しめるゲームです。

 

 ゲームデザインとしては、ゼルダライクとソウルライクのハイブリッドのような設計になっており、ギミック要素、やりごたえのあるボス戦、アイテムを増やすことで行動範囲を拡げる等、ゼルダとソウル系ではお馴染みの要素が散りばめられています。

Death's Door : Power Up

集めたソウルでパワーアップ!

 しかし、率直な感想としては、ゼルダ系とソウル系の喰い合わせは正直良くないんじゃないかと感じてしまいました。近いようで遠い、この二つのゲームデザインが異なるゲームの融合はそれほど効果的ではなかったように思います。

 

ゼルダ系とソウル系

 ゼルダと言っても2Dと3Dがありますが、ここでは2Dゼルダを指します。いわゆるゼルダライクのインディゲームの多くは、神々のトライフォースなどの2Dゼルダを基調としています。謎解きをメインとしたアクションRPGです。

Death's Door : Fire Arrow

仕掛けを解いて、進め!

 そして、ソウルライクはデモンズソウルから始まった、ダクソ三部作を見本としたもので、手ごわいザコキャラ、厳しいボスキャラに対して何度も挑むゲームになります。成長要素や武器防具を集めて鍛える、戦闘重視のアクションRPGです。

 

 どちらもARPGであり、筆者は両方好きなのですが、似てるようでこの二つのジャンルのゲーム性はかなり異なっています。

 

 ゼルダをやりたいならゼルダをやるべきで、ダクソをやりたいならダクソをやるべきなのです。なので、このDeath's Doorは良いゲームではあるのだけど、中途半端になっているような気がしてしまいました。

 例えば、ゼルダ的な謎解き要素で言えば、とある城のダンジョンでのギミックは良かったですし、ダクソ的なやりがいあるボスが何体かいました。しかし、それらを融合するとしたらどうでしょう。

 

 ゼルダやダクソに引っ張られず、Death's Doorは単にこういうゲームなのだと素直に受け取ればいい、と言われたら、確かにそうかもしれません。しかし、ゼルダ系とソウル系の融合は難しいものなのだなと実感せずにはいられませんでした。

 

 ゼルダは謎解き要素がメインなので、道中こそがメインコンテンツです。なので、ボス戦はどちらかというとイベント戦的な要素が強く、もちろん歴史的に強いボスもいますが、そのダンジョンで活用してきたアイテムやギミックを利用して、その応用でボスを倒す、という展開のものが多いです。

 ソウル系も探索要素があるにはあるのですが、道中はボスに辿りつくまでの障害物であり、慣れれば通り道、でも油断すればやられる、というもので、特にダクソ3はロックマン悪魔城ドラキュラのステージのような構成になっています。そして、ボス戦こそがメインコンテンツであり、プレイヤーは何度もボスに挑みながら攻略していくことになります。

 

 つまり、この二つのゲームを融合すると、ダンジョンの謎を必死に解いた後に、滅茶苦茶強いボスに辿りつき、ボコボコにされる、ということになり脳みそを酷使することになります。なので、うまくバランスを取ることが必要なのですが、Death's Doorは一応それなりに成立させてはいます。

 が、やはりゲーム性そのもののバランスは、厳しく見れば各要素ごとに上手く噛み合ってないと感じる部分があります。でも、インディゲームとしては良い感じです。

 

 自分としては、ゼルダとソウルを融合させたゲームを作りたい!ともけっこう思っていたので、一つのゲームに複数のゲーム性を入れ込むことの難しさを知り、うーーーーむ!となってしまいました。

 

ダメな所!!

音楽

 ネガティブな話題はまだ続きます。まず声を大にして言いたいのが、音楽がゲームと合ってねぇ!!たぶん、今までやってきたゲームの中でも、特に音楽とゲームが合ってない!

 音楽自体は独立したものとして聞けば、それ自体は良いんですよ。しかし、ゲームのビジュアルや世界観を考えると、ちょっと合ってないのが多いです。遊び心が足りないし、無駄に荘厳すぎるアレンジも多い。

 ゲーム中の音楽が頭の中で鳴ったり、口ずさんだりもするので、曲自体は良いはずなんですけど、インディゲーム特有の詰めの甘い部分が出てしまっていると思います。

視覚効果

 アクションゲームなので、視認性は大事です。カメラは斜め見下ろし方式でパッド使用なら右スティックで少し動かせます。カメラ周りの問題はなく、そこはストレスなくプレイ出来たのですが、いくつかの視覚効果に関して問題がありました。

Death's Door : Option

メニュー画面のオプション設定ページ

 まずは画面の揺れを3に下げてください。メニュー画面のオプションから設定できます。初期設定だと弓を打っただけで、馬鹿みたいに画面が揺れます。必要ない方はゼロにしてしまっても問題ないと思います。

 そして、デフォルトでDOF(デプス・オブ・フィールド)エフェクトがONになっているのですが、これも切った方がいいです。見栄えは良いのですが、ゲームプレイにおいては、あまり良い視覚効果ではありません。

 DOFでは基本、プレイヤーかその周辺の地面に焦点が合わせられます。しかし、クオーター・ビュー方式の3Dゲームゆえに、右斜めや左斜めに進むことが多いため、DOFが効いてるとその進行方向先の地点がぼやけてしまう、ということになり、これはストレスにしかなりません。

 

 人間の目には焦点を合わせる機能があり、見ているモノより近かったり遠いものはボヤけて見えるのは皆さん知っての通りです。そして、違うものを見たい!と思った瞬間、人はそのモノに目を向けて焦点を合わせることが出来ます。しかし、DOFは単純にカメラとオブジェクトとの距離で適用される効果です。右斜め上に何かあるぞ!と思ってプレイヤーがそちらに意識と視線を向けても、カメラは焦点を合わせてはくれません。この精神的苦痛は計り知れないです。

 だから、この効果は切るべきだし、カットシーン以外はそもそも効かないようにゲーム側で設定するべきだったと思います。

視認性

Death's Door Guradian

ビームで画面が歪む!派手なのは良いんだけどさ・・・

 ゲームは観るものではなく、自分で動かしていくもののはずです。先述した視覚効果以外にも、いくつかの視覚的な問題点があります。

 単純に視認性があまり良くないステージ、ダンジョンが多いです、雰囲気は良いんですが。Death's Doorはローポリなトゥーン調であり、本来視認性は良いはずなのですが、ライティングはリアル寄りであったり、デザインやカラーリングの問題で、見えにくいケースがかなりあります。

Death's Door : Shadows

 一応、ダークな世界観ではあるので、陰影を強くするのは良いんだけど、それは単に見た目や世界観のためのものであって、アクションゲームとしては何か工夫や補助が欲しいよねっていう部分ではあります。一応、主人公が物陰に隠れるとシルエットがオーバーレイ描画される、という補助機能はあるので、そこは良かったです。

 ロケーションによってはオープンで見易い場所もあって、ゲームとしては単純化って大事だよなと思いました。

 

 また主人公は小さなカラスで可愛らしいのですが、もう少しだけ体が大きい方が見易かったんじゃなかろうか。色もカラスだから黒いのは当然としても、もう少し見易くなるような工夫が欲しかったですね。

 ダクソは主人公自身がやや光を発していて、それで周囲が照らされる、という設計になっていますが、そういうのがこのゲームにあっても良かったと思います。

 

 とあるボス戦にて、割れた壺の破片がずっとステージ上に残ってて見辛くなる、という場面もありました。いや、消せよ!!そういう嫌らしさはいいんだよ!そんな所で難しくしてもしょうもないんだよ!とちょっとムカつきました。

ラッシュ戦が多すぎる

Death's Door Rush

閉じ込められて一定数の敵達と戦う

 ラッシュ戦とは通常敵がたくさん出てきて、一定数倒したり、一定時間耐えるとクリアになる一種のイベント戦です。

 Death's Doorはこれが無駄に多い!別にラッシュ戦自体は良いんですが、あまりに多いとげんなりしてしまいます。ダンジョンの道中でもあるし、特殊なアイテム(と言っておきます)を手に入れるための課題もラッシュ戦はちょっと流石に・・・。洋ゲーってラッシュ戦好きですよね!でも、ほどほどに!!

 

まとめ!

 という感じで文句もありましたが、最初から最後までダレることもなく遊べたので、全体的な完成度はインディゲームとしては上手くまとまっているゲームだと思います。

 Unityで作られるゲームも良い作品が本当に増えてきたと思います。今回、指摘した問題点もUnity側の問題ではなく、あくまでゲームデザインする側の問題が起因となっているものですからね。今後とも、佳作良作、傑作が作られていくのだろうと期待するのみです。

 

 そして、インディゲーム制作を目指している者としては、異なるゲーム性の融合の難しさを学べたので、良い経験となりました。