今回は不可思議3Dパズルゲーム、Manifold Gardenのレビューです。現実世界、つまり私達の実生活における空間認識というものを大きく揺らがせるゲームになっています。(約3900字)
非現実的で、ゲームでしか味わうことのできない空間とそこでの謎解き、という点において、このゲームは非常に面白い体験を提供してくれます。
ただし、空間認識能力に強い問題提起をしてくるゲームなので、単純にゲーム中に酔ってしまうかもしれませんし、あるいはゲームを終えた後で、部屋の壁が床に見えてくるかもしれせん。そういう意味ではかなり尖ったゲームです。
このゲームはFPS視点、第一人称視点のゲームで、同じくFPSスタイルのパズルゲームのPortal1, 2のような操作性になっています。Portalほどアクション性は強くないですが、Portalと同じく、あるいはそれ以上に3D酔いを引き起こすかもしれないゲームなので注意が必要です。(自分はPortalでは酔いませんが、このゲームでは酔うというより少し頭が痛くなります)
およそ6時間ほどでクリアしました、特に詰まることがなければ、6, 7時間程度でクリアできると思います。正直、得点はかなりつけにくいゲームです。アート性が強いですし、ニコニコしながらやるゲームでもありません。90点かもしれませんし、60点かもしれない、そもそも、点数をつけること自体にあまり意味がないゲームとも言えます。
アートとはそういうもの、と言ってしまうのは『逃げ』かもしれませんが、このゲームが生み出す『非現実感』というのは、なかなか他にないものですし、Unityでこういうゲームを作れるということは素晴らしいことだと思いました。
線画調のキテレツ空間
まずは特徴的なヴィジュアルを生み出しているのは、線画調のフラット・シェーディング。非現実的さを更に際立たせると同時に見易さもあり、パズルゲームとしての遊びやすさも向上させていると思います。
やはり、ビジュアル面の工夫というのは、見た目の良さと機能性の両立が大事ですね、シンプルな幾何形体のオブジェクトが多いというのもあって、独自性のあるビジュアルを生んでいると思います。
この世界の空間には端が無く、上下左右、四方八方に無限ループしています。つまり、歩き続ければ、元の場所にまた戻るし、飛び降りれば永遠に落ち続けます。
宇宙にだって端はある(とされる)のに、そんな現実にはありえない空間をこのゲームは作り出しています。景色の向こうに見える建物はまさに今自分が立っている場所なのです。
この非現実感あふれる世界には更なる仕掛けが仕組まれています。それは床が壁にもなるし、天井が床にもなる、というものです。
床が壁になる?
このゲームでは、空間の床を箱を転がすように自由に変えることが出来て、それが本ゲームにおける最大のシステムとなります。
上画像は少し分かりにくいですが、プレイヤーは部屋の上部を見上げており、壁には何か突起物があり、その近くの天井には正方形のドアが見える、という構図です。
突起物はFPSなどでお馴染みのEキーで押せるボタンでした。壁の近くに立ってSPACEバーを押すと、壁が床になってボタンを押しに行けます。
このゲームには様々なギミックがあるのですが、基本アクションというのは、この空間をグルグルと回し、立って進むべき床を変える、というものです。ちなみにジャンプは出来ません。飛び降りることは出来ますが。
この仕組みを文章で説明するのは難しいですね。現実世界においては、よっぽどの大仕掛けがなければ、床が天井になったり、壁に立ったりなんてことはないでしょうから。しかし、このManifold Gardenの世界では、それが基本行動であり、これを活用して様々なパズルを解いていかなければいけません。
チュートリアルを覗いてみよう
上画像の二枚は、まさに最初のチュートリアルの場面になります。このシュールレアリスムな世界に慣れるのにはそれなりの時間が必要なはずですが、個人的にはチュートリアル・ステージは少し短いのだけが残念です。
というわけで、チュートリアル部分の解説を交えつつ、このゲームでは一体何をするのかということを紹介していきたいと思います。
新たな部屋に入ると、また壁にボタンと天井にドア、そしてその奥に部屋が見えます。さっそく壁を床にしてみます。
緑スイッチを押して、部屋に入ると壁に灰色のキューブが張り付いています。とりあえず、この壁も床にしてみます。
すると、キューブが赤く光り、持てるようになります。Manifold Gardenにおけるキューブはそれぞれの方向と対応しており、その矢印方向に重力が働いている時にのみ持ち運ぶことが出来ます。非アクティブの時には、動きが完全に止まります。
キューブの色は床の色と連動しており、床の色のキューブが今アクティブになっている、と考えると分かりやすいです。
というわけで、赤いキューブを地面の赤い正方形マークの所に置くと扉が開きます。このキューブを上手く移動させ、仕掛けを動作させる、という謎解きは本作の基本中の基本となります。
また別の部屋に進むと、今度は段差の上に青いキューブ、そして赤いキューブが段差の底に落ちています。ドアからは2本の線が伸び、この2個のキューブをそれぞれ床スイッチに置かないと開かないという仕組みになっています。
青いキューブは床を青にすれば、そのまま床スイッチに運ぶだけです。しかし、赤キューブはどうでしょうか?ここではその解法は省きますが、ともかく2つの床スイッチをアクティブにするとドアは開きます。
この画像の状態では床は青となっていますが、天井にある赤キューブは落ちてきません。非アクティブ化したキューブは灰色となって固まり、重力の影響を受けなくなるからです。しかし、この状態でも床スイッチ(天井スイッチ)に触れていれば電流はちゃんと流れるので大丈夫。この性質は今後の謎解きでも重要な性質となってきます。
床スイッチと床の色が一致してるなら問題は起こりませんが、異なる色の面にスイッチがあると工夫が必要になります。
上画像は青スイッチが緑の床に設置されており、床を青にしたところで青キューブを壁にある壁スイッチに置くことが出来ません。
ここで先ほど明らかになった『スイッチにキューブが触れてさえいれば電流は流れる』という性質が役に立ちます。垂直にそびえたつ壁にキューブを置くことは、当然できませんが、置く必要はありません。触れてさえいればいいのです。
そして、『非アクティブ化したキューブは動きを止めて、重力の影響を受けなくなる』という性質もあります。床を青にした時、非アクティブ化するのは画像にも写っている緑のキューブです。
というわけで、ほぼ答えは言ってしまっているのですが、正解を示す画像の掲載は控えさせていただき、チュートリアル面の紹介はここまでにしたいと思います。
君自身の手でナゾを解き明かせ!
プレイヤーを待ち受けるナゾ
という風に、謎を解きながら進んでいくゲームです。序盤はFPSパズルゲーをやった経験のある人であれば、それなりに簡単だと思いますが、進むにつれて多様なギミックが追加されていきます。
少しだけギミックを紹介すると、水流を利用する謎解きが出てきます。この画面では噴水のある部屋のドアを開け、その結果として水が流れてきています。
床スイッチに水が来た状態でキューブを置くと木が生える!!このゲームの中では、かなりの癒し要素です。
そして、なんとキューブの向きをQキーとRキーで回転できることが判明!水の上にキューブを置くと、キューブ上部にある凹みの形に合わせて水の流れの方向を変えることが出来ます。
この水の仕組みはかなり好きです。この手の3Dパズルでは、ビームの向きを変えてターゲットにビームを上手く当てる・・・という仕組みはけっこうあるとは思うのですが、人間にとって不可欠であり、重力の影響を受ける水、というのがいいですよね。
という具合に様々なギミックがプレイヤーを待ち受けています。前述しましたが、チュートリアル部分は意外と短く、ペース早めにギミックが追加され、少し混乱してしまうかもしれません。
この常識の通じない世界に慣れるための時間、ステージをもう少し用意してほしかったな、というのが正直な感想です。
なにしろ我々の常識とはかけ離れた、非ユークリッド空間での旅です。私達の『当たり前』を捨てる必要があります。そんな解き方でいいんかーーい!ソコとココ繋がってるんかーーい!というのもあります。
上画像の左右の入り口はそれぞれがまったく別の部屋へと繋がっています。つまり、まったく同じ場所に2つの部屋が重なっている、ということであり、何を言っているのか分からないと思いますが、この世界ではそれは普通にありえることなのです。
慣れましょう!
まとめ!
というわけで、現実世界では味わうことのできない空間感、空間がねじ曲がったり、折りたたまれてる非ユークリッド空間とはどんなものなのかを感じてみたい方にはオススメです。
きっと頭を抱えたり、脳みそが痛くなったりすることでしょう!現実の階段を昇るのか降りるのかよく分からなくなったら、あなたも立派なManifold Gardenプレイヤーだ!!